県立浦添看護学校をたたき売り

比嘉京子

2012年01月12日 23:05

下記は県立浦添看護学校の土地、校舎、備品等の売却議案(乙第15号議案)についての「反対討論」です。


乙第15号議案「財産の処分について」反対の立場から討論します。

乙第15号議案は沖縄県立浦添看護学校の校舎・大講堂、体育館および工作物を処分する議案であります。議案には上がっておりませんが、土地も同時に売却するというものです。


 建物の事業総額約13億8000万円、面積約6400平方メートル、土地は1万1000平方メートルで売却価格3億2380万円、土地・建物の合計価格は4億420万円であります。
これらの数字をどう判断するのか。次の資料を当局に提出を求めました。売り手である県が依頼した不動産鑑定評価書、買い手が依頼した不動産鑑定評価書、および県有財産売買仮契約書、移譲先選定までの経緯等を入手し精査した結果、平成20年の移譲先選定の際に県が依頼した不動産鑑定所が平成19年に資産壌渡の概要として土地・建物価格として5億2250万円の鑑定結果を出しています。しかしその際、処分直前に2者による再鑑定を行い決定するとしています。さらに「教育教材機器等備品については、原則として有償壌渡とする」と明記しています。

 私は本会議において、2社の不動産鑑定評価書における「再調達原価」の積算根拠と「残価率」の積算根拠の提出を要請したところ「提出は困難である」との回答がありました。さらに文教厚生委員会で質疑したところ、「鑑定士は国家資格であり、知事が指定する鑑定業者の中から選定し依頼している。われわれは鑑定について説明できない」とのことでした。しかしながら県の「管財関係例規集」第3章評価、「第14 鑑定評価の依頼」では、不動産鑑定業者に鑑定を依頼する場合は次に掲げる事項を別途提出を求めるものとする。としております。7つの項目があり、その(3)に「再調達原価の積算根拠」が掲げられています。つまり別途提出されなければならないもののひとつであります。説明がつきません。
 鑑定士は、不動産の鑑定評価に関する法律で責務がうたわれ不正不当なことが禁じられていることは承知しています。しかし鑑定結果には大きな幅があることも事実です。本会議で土木建築部長に逆の立場から、いわゆる県民の財産を買い上げる場合の手法を質疑したところ「近郊地域の取引価格を参考にして」との答弁でした。土地や建物を買い上げる際、県民の財産を周りの状況に照らし、根拠を示し交渉し買い上げる、同時に県民財産はできるだけ高く処分する。このことは県民の不利益を最小限にとどめるという当然あるべき姿ではないでしょうか。この観点に立てば、今回の事案は、元になる数字の根拠が示されないこと自体問題であると言わざるをえません。
そこで私は、平成22年度国土交通省の建築着工統計調査報告の都道府県別、用途別における沖縄県の教育・学習支援業用建物のm2あたり単価と比較してみましたところ2社の鑑定とも安価でありました。残価率を税法上の定率法・定額法と比較しても大きく乖離しています。さらに特筆すべきは、機能的・経済的減価として35%を差し引き、さらに市場性減価の名目で30%差し引くなど売り手である県民の側に立った売却とは言えません。
土地においても、2つの道路に面している浦添市の土地が坪当たり9万7千円であることは県民的に納得がいくでしょうか。先に述べた教育教材機器等(1467点・・・県の台帳に1869万円とされている)の加算も見当たらず、平成19年の資産概要に示した5億2千万円余の金額から今回の金額へ減じた根拠も示されておりません。

最後に、契約上危惧する点として、契約から10年間は学校存続が担保されているものの、10年後においてはその限りではない。ということがあります。

 県立浦添看護学校の民間委譲は看護師養成における公的役割の放棄、県立病院の存続および県民医療の質への影響、さらに財産の処分においては県民財産の叩き売りであることを申し述べ討論とします。

1票差で売却が決定し、県立浦添看護学校は民間へ移譲されることになりました。

県議会最終日(2011年12月6日)